もういない人に言ってもしょうがないこと
起きて
仕事をする。なんとはなしに、国際学会の話をしたらぜひ行ったほうが良いという反応をもらう。い、行きたくねー(大して面白そうなことはないので)
失踪
ラボのパイセンが失踪した。正しく言うとラボのHPを見たら、本来は休学中で名前は残ってたはずなのに、「OB・OG」のカテゴリに移されて在籍期間も一月前で打ち止めになっていた。 「あぁ…だめだったんだね」と思った。
あまり喋らない人だったが、時折出す笑い声が楽しそうな人だった。
研究テーマは「Listen and Tell」というもので音声情報からそこがどういったシーンか推測する(例えば、ガタガタ揺れながら電車内のアナウンス音が流れる音を与えると「ここは電車内」みたいに文章出力する感じ)もので、それをB4からやってたんだけど、M1でいざ論文をまとめて国際学会に投稿しようとした際に、中国あたりから全く同じテーマ(運命は残酷なものでタイトルまでも同じ「Listen and Tell」)が出てしまい、おまけに向こうのほうが精度が高かった。
研究に努力賞はないというか、もう新規性がなくて本当に苦しそうにしていたし、軌道修正しようにも向こうのほうが精度が高いのでどうしようもなかった。
- 今でも冬期研究報告会で先生にガチ詰めされていたのを覚えている。
- 皆は20分の研究発表が質疑応答のせいで一時間に延長されたことある?知らないほうが良いと思う。
確か、その後は別のテーマについて研究を始めて(確か、鳥の音声信号処理)、俺もデータの収録を手伝ったりしたんだけど、共同研究していた企業に就活で応募して落ちて、それっきり大学には来なくなった。コロナで連絡も取りづらくなった直後だったし。毎週、「パイセン、輪講に来ないのかな…」みたいな心配をしていたのを覚えている。
でも、あの日に戻れたとしてもきっと結末は同じなのだろう。俺は俺で自分の研究でパンクしていたのでそれどころではなかったし、人は人を助けられるようにできていないから。
このアカデミックとかいう界隈は20人に一人が修士課程で消える。後、もう少し母数を集めると自殺者も出てくる。俺は意識的に鈍麻していたし、図太かったからなんとかなったけど、どうしようもない世界だと思う。俺になにかできるようにはなってないし。
実際、俺の学科で卒業式にいた人数は48人で、これは学部二年生で学科に配属されたときと同数だ。大学院になってから少なくとも10人以上入ってきているというのに。
でも、もうちょっとどうにかならなかったかなー。なってほしかったな。
まぁ、でももういない人に言ってもしょうがないんですけどね。
ふたりの証拠
読み終えた。悪童日記三部作の2つ目。
アゴタ・クリストフの文章は感情をまるで載せないので、時折ドキッとする行動を取るし、その書き方自体が鮮烈な印象を与える。特にリュカが何を考えてるか途中まで全く分からなかった。
とにかく、ラストが衝撃でだってこれまでの話全部ひっくり返るじゃん。この世に誰かの物語があったとして、それが本当にあったなんて誰が証明できるんだよ、という静かな絶望がある。